第3項 年金不安対応こそがiDeCo加入の本筋

 

将来の年金が不安だからiDeCo加入を検討する!
つまり、
将来受け取れる公的年金の額だけでは老後の生活費をまかなえない、
と思うからiDeCoに加入して自分で老後の為の積立を行う。


これが本筋であり、制度の主旨でもあります。
公的年金で足りないと思ったら、自分で老後の積立をしてね、
その分は税金控除で手助けしますよ」と政府は言っているわけです。

 

この政府からのキラーパスをどう捉えるか?
公的年金で国民の老後の面倒を政府は見る気がない!」
「あくまでも公的年金は持続可能な基本制度であり、
iDeCoは余力がある人を対象にしたプラスαの仕組みだ」
iDeCoは不要な制度であり、官僚機構の天下り先創設の為だ」等々。
受け取り方は個々人の自由でしょう。

 

いずれにしても、まず一点。
公的年金は現役世代の掛け金が高齢者への受給を支える側面があるのに対して、
iDeCoは掛け金があくまでも自分自身の老後の積立である点、
自己利益だけの損得勘定で言えばiDeCoの方が確実にフェアな運用です。
公的年金に上乗せして老後の為の積立をする金銭的余裕がある人が、
よりフェアな運用と税効果で得をするのは、ある程度は当然でしょう。
資本主義ですから。老後の生活を資本主義原理に任せるべきか?
と思うのならば、それは政治議論の対象です。

 

 

次に、二点目。
「そもそも昔はiDeCoなんてなかったし、現在の高齢者が公的年金以外に、
老後の為の貯蓄積立を行なっていた形跡もない」
「だけど、彼らは不自由なく老後を暮らしているではないか?」
という指摘に対しては、彼らに直接聞くのが一番だと思います。
個人的に見聞きした実感としては、
彼らは公的年金制度で多大な恩恵を受けている。
彼らは親世代からの少なくない遺産相続を受けている。
彼らは親戚や町内といった相互扶助グループに守られている。
という可能性が我々世代よりは高い、と言及するに留めます。
自分もこれらに該当すると信じるに足る根拠があるならば、
別にiDeCoの加入検討は無視しても構わないかもしれません。
一方で、老後破産、高齢者の貧困、働き続ける高齢者は増えています。
自分がそうなる覚悟がある場合も同様です。

逆に言えば、
特別両親がお金持ちでもなく、特権的公的年金制度も持たず、
損得勘定抜きで老後の自分を助けてくれる仲間もいない、
けれども老後はあまり働きたくなくて「普通に」生活したいならば、
iDeCo加入の検討は、必要だ!と云うことです。

第1、2項で述べてきた費用対効果や投資としての損得以前の問題です。

 

 

最後に。
老後の生活費は「今」より少なくて済む、というのは誤解です。
現在毎日、使っているお金を考えてみて下さい。
現在の出費で老後つかわなくても済むお金は思ったより、少ない。
知らぬままに会社が負担してくれている出費も多い筈。
老後は毎日が休日です。むしろ老後に増える出費も大きい。
働き続けるにしても、健康や体力は確実に減退しています。
現役時代と同等かそれ以上の収入を得られる人は一握りです。
介護のお金は莫大ですし、医療費もかかるでしょう。

持ち家(ローンがなくても修繕費や固定資産税がかかります)の有無、
子供(援助が受けられるか、むしろ孫の為の出費が増えるか?)の有無、
様々な要素によって人それぞれですが、
まずは控え目に「現在の生活費」✖「働かないで暮らす年数」を計算し、
そこから見込みの退職金や年金で貰える総額を差し引いてみて下さい。
介護や大病抜きのポジティヴな試算です。
将来の年金の受取額、税金、年金保険制度にも興味を持つでしょうし、
現在の支出を見返すことになるでしょう。
繰り返しですが、「お金の話」に無頓着過ぎることが問題です。

 

 

「先のことは誰にも分からない」
だからこそ今を全力で楽しく生きる、というのは聞こえが良い。
しかし「全力の今」には「未来に全力で備える今」も含まれる筈です。
分からない将来の不安を一つ一つ明らかにする作業の端緒に、
iDeCo検討は必ずなります。

 


最低でも1000万円以上の貯蓄が必要な人が殆どだと思われます。
iDeCoの積立金額の上限もこの辺りを想定しているのではないでしょうか。

 

以上は国内の経済社会政治情勢とインフレを一切踏まえていない話です。
それらについては次項で言及します。